「iQOS」で実験 『加熱式たばこも血管には有害 血管内皮機能が低下』 |
最近よく
『男性の喫煙で加熱式の電子タバコと火をつける紙巻きタバコでは妊活での影響に差があるのか!?』
『電子タバコなら吸ってもいいですか?』
こんな質問を良く受けます。
なので論文などを検証してみました。
★「iQOS」で実験
『加熱式たばこも血管には有害 血管内皮機能が低下』

加熱式たばこ製品の「iQOS」(アイコス)は血管に悪影響を与えるという調査結果を、米国のカリフォルニア大学が発表した。iQOSの蒸気に曝露したラットの血管内皮機能は、一般的な紙巻きたばこの煙に曝露したラットと同程度に低下したという。
この研究結果は米国心臓学会(AHA)のサイエンスセッションで発表された。
加熱式たばこでも血管内皮機能が低下
加熱式たばこは、たばこの葉を燃やさず加熱して生じた蒸気を吸って楽しむ製品。
このうち大手たばこ企業のフィリップモリス社が製造する「iQOS」は、日本、カナダ、ロシアなどで販売されており、米国でも米食品医薬品局(FDA)に対し承認が申請されている。
通常の紙巻きたばこはたばこ葉を600度で燃やすが、iQOSでは350度で加熱するため、ニコチンが含まれた蒸気は生じるが煙は出ない。
同社は「通常の紙巻きたばこの煙に比べ、iQOSが出す蒸気は、9種類の有害成分の量を約90%カットしている」と主張している。
これに対し、カリフォルニア大学のマシュー スプリンガー教授(循環器内科学)は、「たばこ企業では、加熱式たばこ製品が通常の紙巻きよりも健康への害が少ないと主張していますが、こうしたデバイスの健康への影響は十分に検証されていません」と言う。
スプリンガー教授らは実験ラットに
(1)iQOSを加熱した蒸気
(2)紙巻きたばこの煙
(3)清浄な空気
のいずれかを曝露させた上で、血流依存性血管拡張反応(FMD)測定により評価した。
FMD測定は、非侵襲的に「血管内皮機能」を測定する方法。血管の柔らかさを数値化することで、早い段階で動脈硬化の傾向が分かる。
その結果、曝露は1回15秒間として5分間に5回行った場合、血管内皮機能はiQOS群で58%、紙巻きたばこ群では57%低下した。
曝露を1回5秒間として5分間に10回行った場合、血管内皮機能はiQOS群で60%、紙巻きたばこ群では62%低下した。
iQOSの蒸気への曝露は、紙巻きたばこに曝露した場合と同程度の、血管内皮機能の低下をもたらすことが示された。
「新型たばこ」に対し呼吸器学会が見解 「健康に悪影響が出る可能性」
http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2017/006934.php
吸い続ければ健康に悪影響をもたらす可能性
「たばこの葉の燃焼が起きていない場合でも、血管内皮機能の低下の原因となる化学物質がiQOSから放出されている可能性があります。
血管の機能が低下すると、心臓や他の臓器に、必要な血液が十分に行き届かくなり、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳卒中などの危険性を高めます」と、スプリンガー教授は言う。
循環器系におけるたばこの煙への反応の仕方はヒトとラットでよく似ているため、この研究結果はヒトにも当てはまる可能性があるという。
血管の状態を悪化させる物質の特定はされていないが、最大の問題はニコチンではないかと推定している。
「たばこの害に関する研究は、経済的な利害関係から独立し適切に行われるべきで、科学的な事実による裏付けが必要です。
たとえiQOSが普通の紙巻きたばこに比べ害が少ないとしても、吸い続ければ健康に悪影響をもたらす可能性があることに注意を向けるべきです」と、スプリンガー教授は述べている。
この研究は米国立衛生研究所(NIH)とFDAによる資金提供を受けて実施された。学会発表された研究は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。
https://news.heart.org/heat-not-burn-cigarettes-may-still-harm-heart-fda-mulls-approval/
米国心臓学会
https://tobacco.ucsf.edu/pmis-iqos-heat-not-burn-tobacco-products-just-bad-cigarettes-terms-adverse-effects-blood-vessel-function
カリフォルニア大学たばこコントロールセンター
熱式タバコも紙巻きたばこもニコチンの量はそれ程変わらないという事をお伝えしましたが、ニコチンそのものの妊活に対する害はどうなのでしょうか?
『ニコチンが精子に与える影響について』
タバコが精子に悪影響を与える事については良く知られていますが、実際にどの物質が悪いのでしょうか?
ニコチンよりタールが悪い、もしくは一酸化炭素が悪いなど色々言われていますが、タールとはタバコの燃焼によって生じる物質の総称ですから色々な物質が含まれています。
ニコチンと精子の関係について調べた研究をご紹介したいと思います。
In vitro effects of nicotine on human spermatozoa
(実験環境においてニコチンがヒト精子に与える影響)
この論文は南アフリカのOyeyipo氏らが2013年のAndrologiaに発表した研究です。
この研究では19歳から26歳の12人の被験者から得られた精子に液体に溶かしたニコチンを加えて、いくつかの濃度で精子の動きに与える影響を調べたものです。
評価項目としては、精子運動自動解析装置を用いた精子の運動の質と、蛍光顕微鏡を用いた先体反応を見ています。
先体反応前と後の精子の状態

先体反応とは精子が卵子の表面に接近した時に起こる反応で、受精に欠かせないものですが、卵子に接近していないのに先体反応が起きてしまうとその後の受精能力が失われてしまいます。
このような不必要な先体反応は化学物質や放射線などによって引き起こされるとされており、妊娠力の低下を招くと考えられています。
この研究では19歳から26歳の12人の被験者から得られた精子に液体に溶かしたニコチンを加えて、いくつかの濃度で精子の動きに与える影響を調べています。
評価項目は、精子運動自動解析装置を用いた精子の運動の質と、蛍光顕微鏡を用いた先体反応を見ています。

上の棒グラフは精液にニコチンを加えて30分後、60分後、120分後、180分後の精子の運動と先体反応を調べたものです。
これを見ると、ニコチン濃度が増える程、精子の運動の質は低下している事が分かります。
一方、先体反応についてはニコチン濃度が上昇するほどに反応が早まることが確認されています。
この研究ではさらに特殊な染色方法を用いて、精子の生存率を測定しています。

上の表を見ると、ニコチン濃度が高い程精子の生存率が低下していることが分かります。
ということで結論としては、
・ニコチン自体が精子の状態を悪化させる。
・ニコチン濃度が高いほどより悪影響は強い。
でした。
この実験は精子に直接ニコチンを添加しており、実際の喫煙の状況とは異なりますが、ニコチンそのものが精子に影響を与えるという意味で重要な報告かと思います。
結論として・・・
加熱式タバコも紙巻きたばこもニコチンの量はそれ程変わらないので男性の喫煙での精子への影響は加熱式タバコも紙巻きタバコもどちらも同じ。
妊活中の男性は禁煙するべきです。
ただし個人的な見解ですと、その方の仕事などのストレスが喫煙で軽減されるならば多少はしょうがない?とも思います。
仕事のストレスなどで喫煙される場合は、血流を改善する漢方、活性酸素を抑えてくれる漢方・自然薬などと併用されると良いでしょう。
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